CONCEPT WORK実在のご依頼ではなく、Mass.の表現思想を伝える制作例です。
2 0 2 5 ・ 夏

父と、最後に行った海

— 依頼者から、母への贈りもの —
ゆっくり、下へ
一 · 誘 っ た の は 、父 だ っ た
夜明けの高速道路を走る車内。父が運転し、母が助手席に座っている
父が選んだ道を、三人で海へ向かった。

「海でも行くか」
そう言い出したのは、めずらしく父のほうだった。
母は驚いて、それから少し笑って、
冷蔵庫にあるもので、おにぎりを握った。

二 · 車 の 中 の こ と
海沿いを走る車内。父の横顔がミラーに映り、母の手元におにぎりがある
知らない昔話ほど、母はよく笑った。

ラジオと、ときどきの会話。
昔の話が多かった。わたしが小さかったころの、
わたしの知らないわたしの話。
助手席の母が、いちばん笑っていた。

三 · 海
静かな港の防波堤に並んで座り、海を見る父と母
言葉がなくても、三人でいる時間だった。

着いたのは、昼をすこし過ぎたころ。
泳ぐわけでもなく、三人で防波堤に座って、
おにぎりを食べて、ずっと海を見ていた。
父はほとんど喋らなかった。
でも、それでよかったのだと、いまは思う。

「また来ような」 帰り際、父はたしかにそう言った。 —— 日記より
四 · 帰 り 道 の 夕 焼 け
夕暮れの海沿いを帰る車内。母が眠り、父が運転している
最後だと知らない夕暮れは、静かに後ろへ流れていった。

帰りの車で、母は少し眠っていた。
バックミラーの中の夕焼けが、
ずっと、後ろからついてきた。

あれが最後の海になるなんて、
あの日は、誰も知らなかった。

お母さん。
あの日の海は、いまも
ちゃんと、ここにあります。

また、行こうね。

— 娘より —

このページは、Mass. Memory Page の架空の制作例です。
実際の作品は、あなたの写真と言葉から、
一つひとつ、このように仕立てます。

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